なぜ、「購入 VS 賃貸」 という比較がナンセンスなのか?
分譲マンション (あるいは一戸建) を (ローンで) 購入するのと、 賃貸マンションを借りる (賃借) のと、どちらが得か? という比較の話をよく聞く。 大抵は、ケース・バイ・ケースで片付けてしまうか、 「購入派 VS 賃貸派」などと個人の価値観に帰着させてしまうことが 多いようである。 例えば、 「ローンも家賃も月々の支払いは似たようなものであるが、 購入の場合はローンを完済すれば資産になるのに対し、 借りる場合は家賃を永遠に払い続けなければならない。 一方、 購入の場合は地価が下がったり住環境の変化などのリスク要因もあるから、 購入が得とも限らない」等々...
本当に、ケース・バイ・ケースあるいは価値観の問題なのだろうか?
まず注意しておきたいのは、 「購入」と「賃借」は、対立概念ではないということ。 当たり前の話だが、 「購入」の反対は「売却」であり、 「賃借」の反対は「賃貸」である。 マンションを購入しても、 必ずしもそこに住まなければならないわけではない (税制などを考えれば住む方が得であるケースも多いが)。 購入するにしても借りるにしても、 どこかに「住む」はずであるから、 共通部分である「住む」は除外して比較を行なうべきであろう。
どうやって「住む」を除外したらよいか?
マンションを購入して (他者に賃貸するのではなく) 自らそこに住む場合、 自分自身に対して「賃貸」したと考えればよい。 つまり「賃借人」である自分が、「大家」である自分に家賃を払ってそこに住む、 と考えるわけである。 このように考えれば、 「自宅としてマンションを買う」という行為は、 「マンションを買って (自分自身に) 賃貸」という行為 (つまり不動産投資) と、 「マンションを賃借して住む」という行為に分解できる。
| 買う | ⇒ | 不動産投資 + (自分から)賃借して住む |
| 借りる | ⇒ | (他人から)賃借して住む |
このように考えれば、 「賃借して住む」の部分は両者に共通であるから除外して比較することができる。
つまり「買うか? 借りるか?」という比較は、
「不動産投資を行なうか? 行なわないか?」という比較になる。
4000万円の新築マンションを購入するとして、 頭金を800万円(購入価格の2割)、 残り3200万円を金利3%、 35年返済で借りるとした場合、 月々の返済額は12万3000円となる。 頭金800万円を加えた総返済額は約5970万円。 これに固定資産税、維持管理費等の支払いが約1700万円。 結局7670万円の支払いをして、マンションが自分の資産となるわけである。
ここで、 (自分自身に) 月額 12万3000円の家賃で賃貸すると考える。 もちろん家賃の額は任意に設定して構わないのであるが、 ここでは簡単化のため、 家賃をローンの月々の返済額と同額の 12万3000円に設定してみる。
4/19追記: 任意に設定して構わないといっても、 賃借人としての自分が「払ってもよい」と思える額であることが大前提である。 どーせ自分自身に払うのだからいくら高くても懐は痛まない、 などと考えてはいけない。 月々のローン返済額と同程度の家賃を払うくらいなら購入したほうがお得 (つまり 12万3000円以上だと払いたくない)、 と考える人が多数派であるようなので、 設定する家賃は月額 12万3000円を上限とすべきだろう。
すると、賃借人 (つまり自分) から払ってもらった家賃を、 そのままローンの支払いにあてることができて、 固定資産税と維持管理費等の支払いだけでマンションが自分の資産になるわけである。 つまり「大家」としての自分は、 頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円だけで、 (35年後には) 4000万円のマンションを手にいれることができる。
おいしい話のように聞こえるだろうか?
もしこの話がおいしい話に聞こえるなら、 マンションは購入すべきという結論になるわけだが、 よく考えてみて欲しい。 まず、 35年後に 4000万円の価値をもっているかどうかは、 そのときのマンション相場次第である。
ここで考慮しなければならないのは、 「果たして地価が今後どのように変動していくか」である。 地価が毎年上昇し続ければマンションの資産価値も上がり続けるので問題ないが、 今の景気を考えると地価の上昇はしばらく期待できず 「地価はもう上がらない」という意見が多い。 正直そのあたりが誰にも明言できないところに 「買うか?借りるか?」の議論がいつの時代もされ、 結局「どっちなの?」に終始してしまうのである。
ここで地価が変動しないと仮定すると、35年後の資産価値は2510万円となる。
地価が変動しないと仮定すると、この話は 「頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円で、 (35年後には) 2510万円の資産価値を持つマンションが手にはいる」 という話に変質してしまう。
おいしいと思えた話に影が差してこないだろうか?
とはいえ、 2510万円の資産価値を持つマンションが (35年後とはいえ) 手に入るのだし、 もしかしたら地価が上昇してマンション相場が大幅に値上がりするかも知れない。 先行きが見えない株に投資するよりは、 大化けするかもしれない「不動産」に投資したい、 と判断する人もいるかもしれない。
賃貸の場合は頭金800万円と税金等の1700万円も不要なので、 購入しなければ2500万円の現金資産が残り、 結局は地価が変動しなければどちらも同じなのである。
「結局は地価が変動しなければどちらも同じ」だから、 ケース・バイ・ケースあるいは価値観の問題ということなのだろうか?
実はそうはならない。
なぜなら、 「頭金800万円と固定資産税と維持管理費等の1700万円の合計 2500万円で、 (35年後には) 2510万円の資産価値を持つマンションが手にはいる」 という理解は間違っているからだ。
支払額が合計 2500万円と思った人は、 800万円を (例えば) 銀行に預けておけば、 (低金利の昨今とはいえ) 35年もたてばそれなりの利息がつくということを忘れている。 毎年払い続ける固定資産税と維持管理費等だって、 総額 1700万円も払うわけだから、 同じ金額を 35年間もかけて積み立てていけば 利息が加算されて 1700万円を大きく上回る額になる。
不動産投資を行なうか、行なわないか、という比較をするのであれば、 不動産投資を行なわない場合に 同じ元手 (総額 2500万円) を 他の投資先へ振り向けた時の収益を含めて考慮しなければ、 フェアな比較とは言えないだろう。 他への投資でどのくらいの利回りが期待できるかは投資先に依存するが、 ここでは簡単化のため、 (ローン金利と同率の) 3% の利回りが期待できると仮定してみる。
最初に 800万円を投資し、 1500万円を毎年均等に (つまり毎年 49万円ずつ) 追加投資して、 3% の利回りがあると仮定すると、 35年で 5214万円にもなる。
つまり、
新築価格が 4000万円のマンションを 35年ローンで買ってもいいのは、
ローン完済時に 5214万円以上で売却することが期待できる場合に限られる。
「土地神話」が崩れた今、 マンションを買うという行為は、 「投資」以外のなにものでもない。 そして、 「個人の投資は必ず余裕資金ですべき」という鉄則は なにも「株投資」の場合だけに当てはまるものではなく、 どんな投資についても当てはまる金言である。
結構な高金利で借金して得たお金で投資する人がいたらどう思うだろうか? 「借金して得たお金」というのは 「余裕資金」から最もかけ離れた資金と言えるだろう。 そんな投資はやめておけ、と誰しも思うのではなかろうか?
しかしながら多くの人が行なっている 「ローン組んでマンションを買う」という行為は、 「借金して得たお金で投資する」という行為となんら変わらないのである。
株に投資するなど夢にも思わないような堅実(?)な人が、 何の疑問も抱かずにローンを組んでマンション等を買ってしまうのが 不思議でならなかったのであるが、
土地の経済学
野口 悠紀雄 (著)
を読んでいたら次のような記述があって合点した。
企業は、いま一つのルートを通じて高地価から利益を得た。 それは、高い住宅を入手するため、 労働者が勤勉に働き、かつ、所得の多くを貯蓄したことである。 家計部門の高貯蓄は、マクロ的に見て、 投資主導型経済成長可能とした最大の要因であった。土地の経済学 51ページから引用
「いつかは夢のマイホーム」という宣伝文句は、 労働者を勤勉に働かせ、 かつその稼ぎを消費ではなく貯蓄に向かわせるためのプロバガンダであったのだ。 「夢のマイホーム」を買おうとしなければ、 余裕資金が手元に残り、 それだけ早く労働の「くびき」から逃れること (つまり生活のために嫌々働くのではなく、自己実現のために働くこと) が できただろうに。
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(1)賃貸金額について
このモデルではいくらで賃貸するかによって結果が大きく変わりますので、ローンの支払い費用と同額とおくのはラフすぎると思われます。
私の地元では4,000万円の新築マンションと同等のものを賃貸すると月20万程度は必要なようです。(Yahoo不動産でざっくりと見ました)
この金額であれば35年で8400万の収入となり、ローン、税金などの投資がすべて回収され、840万の現金とマンションが残ります。
(2)空き室リスク
不動産投資では借り手が付かない空き室が大きなリスクになりますが、このモデルでは自分が借り手なのでそのリスクを大きく減らすことができます。
以上2つを考えると、この投資は濡れ手に粟ですね。買わない手はないです。
むしろ実状は、(不動産屋の広告にもあるように) 月々のローン返済額と同程度の家賃を払うくらいなら、購入したほうがお得、と考えるのが普通の人の感覚ではないでしょうか? だから、借り手としての立場だと家賃は月額12万3千円か、それ以下なわけです。
この議論の肝は、購入したからといって「借り手」としての立場から開放されるわけではなく、「みなし」家賃を意識せざるをえない (正確に言うと意識しないと合理的な判断ができない)、という点にあります。借り手にとって重要なのは、「みなし家賃が身の丈に合っているか?」ですね。
12万3千円くらいの家賃が身の丈にあってる人にとって、20万円の家賃は、「とても払えない!」額ではないでしょうか? でも、4000万円の新築マンションを買うというのは、貸し主としての立場を優先すると、20万円くらいの家賃を払うことに匹敵してしまうわけです。
感覚的には理解し難いことだと思いますが、「購入」と「賃借」は二律背反ではないので、「購入してそこに住む」で損をしないためには、借り手としての立場も意識する必要があるのです。
「家賃の額は任意に設定して構わない」をより正確に言えば、「貸し主としての自分と、借り手としての自分、双方が納得するのであれば」、という前提がつきます。
でもそれって、不動産の賃貸契約では当たり前の前提 (というかどんな契約も双方納得した上で締結するもの) ですよね?
お忙しいところコメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、借り手としての自分を無視することはできませんね。ここがご提案のモデル(借り手としての自分を早々に消してしまっていますよね)のもっとも惜しいところだと思います。
ご指摘のように、借り手としての自分は、支払い金額が身の丈にあっているか、それによって得られる便益が自分の生活にとってどの程度価値があるかといった点を考慮して購入するか、どの物件を賃貸するかを選択します。
ご提示の例で言えば、同様の便益を得るのであれば、賃貸では20万の支払いが必要なところ、購入ではさまざまなリスクが発生するのと引き換えに12万の支払いで住むということになります。
以上のような議論をしていると、結局は借り手としての自分が金銭的なリスクと生活の便利さのどちらを選ぶかという月並みな結論になってしまうのが残念なところです。
特にSさんが書かれている「両家両親からの住宅資金贈与」のところなのですが、住宅購入のための贈与には一定の額までの贈与税の控除が掛かります。この贈与税部分は決して無視できません。